予想の斜め上を行くセルフカバー新アルバム『収穫祭!』リリース☆
楽曲提供企画「DELI町あかり」を展開中のシンガーソングライター・町あかりさんが、セルフカバー中心の新アルバム『収穫祭!』を発表。予想の斜め上を行くカバーはどのようにして生まれたのか、その裏側を、人の曲を歌うときに大切な“ヒント”についてお聞きしました。
『収穫祭!』の12曲は、ライブでやっていた曲を中心に、自然に決まりました
──池尻ジャンクションといつかアルバムを、という話は活動当初からあったんですか?
町あかり ありません。ライブを一緒にやるバンドとしてお願いしたので。
──メンバーはオーディションのような選考で決まったんですか?
町あかり メーザー・ハウス(音楽学校)にほとんど飛び込みみたいな感じで連絡したんですけど、スタッフの方にすごく気に入っていただいて。その方が集めてくださったみたいな感じです。
──収録曲はどのようにして決まったんですか?
町あかり 急にレコーディングすることになったので、今まで池尻ジャンクションと取り上げていた曲の中から、ライブでやっていたものを中心に、これ好きだなーとか、しっとりしてるの入れるなら楽しいのも入れよう、みたいなバランスで自然に決まりました。意図したわけではないんですけど、全体的につくった年もバラけました。
──特に「電球を替えてくれた人」「大丈夫よ」の2曲の印象か、今までの「ピコピコハンマーを持って、一度聞いたら忘れられない曲を歌うシンガーソングライター」という印象から少し変わった気がしますが。
町あかり これも意図的にそうしたわけではなくて。「シンプル」「勢い」「楽しい」みたいなテーマでやっていたガールズバンドが先にあって、池尻ジャンクションは、反対の、繊細な演奏ができる、こだわってアレンジしてくれるような人を集めてやりたいバンドだったので、そういう選曲になった、ということだと思います。
──作詞・作曲・デモ音源の制作当時、つくるのが大変だったとか、逆にすごくスムーズにできた、みたいな印象深い曲はありますか?
町あかり 映画に合わせてつくった「ぽんぽん」「わだち」……「ぽんぽん」は提供曲の中で一番過去の作品かもしれません。いつもそうなんですけど、中村くん(中村祐太郎監督)から「映画作るから、主題歌みたいな、歌ものが欲しいから書いて」と言われて、撮影現場に行って、見てからつくったので、そういう意味では思い出深いというか。「わだち」も撮影を見た記憶はあるんですけど、企画がどこかに行っちゃったみたいで……(苦笑)
──「ナンタラカンタラという人」「乗り換えはチャンスです」は、自分用にストックしていた曲ですか?
町あかり 「ナンタラカンタラ…」は、『EXPO町あかり』をつくっていたときのストックで、ほかに提供する可能性もあった曲です。「乗り換え…」は『あかりの恩返し』のから外れた曲の1つで、「石野真子さんから発注されたら…」という想定で書いた曲です。バンドでやったら面白いかと思って、ライブレパートリーとして復活しました。
──「ナンタラカンタラ…」はCD-Rで配布されたデモ版よりファンク色が強くなったようですね。
町あかり 池尻ジャンクションには前はパーカッションのゴンちゃん(ゴン後藤 ※現スパイシーコウヤドウフのスパイシーゴンゾ)がいたので、もっとナンタラカンタラな感じだったんですけど、忙しくなってやめちゃって、ちょっと感じが変わったかもしれません。デモ音源のアレンジは、カシオトーンのプリセットで、スティーヴィー・ワンダーを凄く意識した、とかいうわけではないんですけど(笑)
人に書いた曲を歌うのは別人になれるみたいで面白い。でもその人に寄せようと思ったことはないんです
──バタバタのレコーディングというお話ですが、何日間くらいで録音したんですか?
町あかり バンド録音が2日、歌入れが2日。バンドレコーディングの間は仮で歌ってました。
──歌入れ2日は大変な気がしますが。
町あかり いっつもそんな感じで。だいたい、3、4テイク録ったらOKなんです。何回も歌ってきているので、突然うまくなったりしないし、疲れちゃうだけだから、飽きないうちにやめるんです(笑)。
──これまでのようなアレンジャーさんの打ち込みや自分でつくったトラックと、バンドのオケでは気分は違いました?
町あかり みんなで合わせてる感じがあって、打ち込みのオケよりも大変でした。気分はそんなに変わらないかなあ。
──「大丈夫よ」は一発録音とのことですが、ほかの曲は3、4回録った中から良いところをつなぐ、みたいな感じなんですか?
町あかり ニュアンスの良いところをちょっと切り貼りするくらいです。ひととおりOKテイクが録れたら、気楽にやってみて、と言われて、少し遊んだ感じで歌ったりすると、その中に面白いのがあったりして、結果的にそっちを活かすこともあります。
──提供曲を自分で歌うという点で、歌入れが大変だった曲はありましたか?
町あかり リハーサルをたくさんやっていたし、ライブでもやっていて、歌い慣れた曲が多かったので、レコーディングはスムーズだったんですけど、「電球を…」「大丈夫よ」はこうじゃないんだよなあ、というか、想定して書いた人の年齢とか歌声を想像して書いていたんだなあと改めて思いました。声がちょっと明るいし。まあ、自分なりにガマンして……がんばって歌った歌ったって感じで(笑)。
これを初見で聴いて、ヘンだと思う人はいないと思うんですけど、自分の中ではすごい違和感というか、だから歌ってくれる人募集というのは、今も思っています。
──声量や、息継ぎ、声の出し方とかを細かく考えたりはするんですか?
町あかり 息継ぎはあんまり考えてない……ですね。吸えるところで、吸う、ヘンじゃないところで。歌い方は……めっちゃ大まかには、明るい曲だから明るくとか、歌の主人公が年齢が低いから可愛く歌うとかは考えてますけど、そんなに細かくは考えてないです。
──自分用ではない、作家として提供した曲を自分で歌うとか、イベント等でカバーをするとき、「自分らしく」という点で意識していることはありますか?
町あかり 意識というのとは違ってきちゃうかもしれないんですけど……まねっこができない、というかその人に寄せようと思ったことがあんまりないんです。いっぱい好きな歌手の方はいますし、カラオケとかでいろんな方の歌を歌ったりもするんですけど、でもそんなに似ないっていうか……。