──待望のファーストアルバムの話も聞かせてください。これまでのシングル曲を収めた盤との2枚組ですが、もともと企画書を書かれたとか。
伊藤美裕 リリースもだいぶ間が空いてましたから、自分がこういうことをやりたいというのをスタッフの方々に解ってもらうため、アルバムを出したいということやこういう曲を歌いたいという内容をまとめて提出しました。そういうタイミングだろうなと思いまして。今回のリリースまでの間にライブでカヴァーする中で、シティポップといわれる都会的で洗練された音楽が気になりだして。1970~80年代のシンガーソングライターの曲がもともと好きだったというのもあって影響を受けて今作をつくりました。ユーミン(荒井 / 松任谷由実)さんのように、自分も作って歌えたらいいなと思って、実は以前から密かに作曲もしていたりしたんですよ。それも声が降ってきた時にやったことのひとつだったのですが。
──ラジオで大石吾朗さんとご一緒されたのを機にそういった方面の方々と会われる機会が増えたことも関係しているんでしょうか。
伊藤美裕 それは確実にそうですね。それまでは歌手の方とご一緒する機会が多かったのですが、ラジオのお仕事を頂いてからはゲストにお迎えしたシンガーソングライターの方にお会いする機会が圧倒的に増えました。今まで知らなかったポップスの世界をいろいろ教えていただいたりして、アルバムを出せるとなった時に自分でもそういうものを表現できたら幸せだなと。
──今回の作家陣で南佳孝さんは特にその世界でのビッグネームですよね。
伊藤美裕 いろんなライブを観に行く中で、自分も音楽に携わる人間なので何か得ようとするため、それを忘れてライブに没頭することってそんなにないんですよね。ただそれでもポール・マッカートニー、大貫妙子さんなど私の中で何人かはいらして、南佳孝さんは正にそうしたおひとりです。こんなに肩の力を抜いて音楽ができるなんてとても素敵だなと。お洒落ですし。石川セリさんの「ミッドナイト・ラブコール」という曲が好きなのですが、それも南さんの曲。そんな方に曲を書いていただけたのは本当に嬉しいです。西脇(辰弥)さんのアレンジの力もすごいと思いました。AOR調の、最初に聴いた南さんのデモとはまた違った魅力になっていて。
──新曲パートの「Disc 1」は5曲で構成されたミニアルバムといった感じでしょうか。
伊藤美裕 いろいろな制約もあったので、5~6曲あれば世界観のようなものは伝わるんじゃないかなと思って。シングルなら2曲のところをこういう形で出せたことに満足していますし、第2章の始まりとしてはそんなに欲張らない方が良いんじゃないかと思っています。これがまた新たなスタートになって見えてくるものもあるのではないかと。今までの私は歌うだけで、曲ができてゆく行程を見ることはなかったわけで、今回はそれをつぶさに見られたというのは本当に大きかったですね。我が子の成長を見守るような。ましてや詞まで書かせていただいたわけですから。作詞に関しては嘘のない言葉を探しながら当てはめてゆく作業の大変さを実感して、ものすごく勉強になりました。自分の中にあるものを言葉にしたので、客観的に見られて、今まで知らなかった自分を知るきっかけになったような気がします。
──これまでの作品を収めた「Disc 2」の曲順もご自身で決められたのですか?
伊藤美裕 はい。自分で考えました。1曲目の「あなたの花になりたい」の松井五郎さんの詞の中にあるメッセージは今も変わらず私の中にあるものなので、やはりこの曲からだろうと。そこからはライブでのセットリストを決めるように、今まで私が演じてきた女性たちを紹介する感じで並べていきました。ライナーノーツにも書いていますが、聴いているとそのヒロインその一人一人が私を応援してくれているような気持ちになります。20代の自分のすべてが詰まっているので、改めて聴いていただきたいです。
PRESENT☆