──今回のアルバム『超冗談だから』もコンペ中心ですね。
近田 そう。ディレクターの川口さんが「CD出しましょうよ」と言ってくださって、最初はリップサービスだと思ったから「いいけど、僕もう曲書くのめんどくさいから、全部曲集めてくれたらやってもいいよ」って、その場限りのやりとりみたいな感じでいたら、本当に65曲もコンペで曲を集めてくれて。それで最初に聴かせてくれたのがアルバムタイトルにもなっている「超冗談だから」で、それを聴いたときに「これ面白いなあ」と思って。今回はそんなシビアな状況の中で、「この曲はどうだ!」っていう感じで、みんなすごく情熱的で熱いものを僕に向けてぶつけてきてくれた気がした。自分で言うのもヘンですけど、それには応えられたかなって思う。どの曲も符割りとか、本当に難しいんですよ。でもそこの部分は「喧嘩上等。バカヤロウ歌えるよ」みたいな気分で歌っていかないとね。
──コンペ以外の新曲は、のん作詞・作曲の「ゆっくり飛んでけ」のみですね。
近田 最初は「いろんな作家にお願いしよう」ってなったんだけど、ほとんどの人が顔見知りなもんだから誰も本気だと思わなくて、返事もしてこないんですよ(笑)。その中で唯一返事をしてくれたのが、面識のなかったのんちゃんだった。最初はYouTubeで「へーんなのっ」って曲のライブを観て「これすげえな!」と思って。ギタリストとしてもすごいし、曲がカッコよかったのよ。それでダメもとで頼んでみたら二つ返事で書いてくれて。演奏はデビューアルバムに曲を提供したSOLEILがすごくよかったのと、ヴォーカルのそれいゆがドラム叩けるっていうから、それもいい味が出そうな気がしたんだ。それで、サリー(サリー久保田)とかにも頼んで、「あのサウンドで、そこにのんちゃんのギターが入ったらどうなるのかやってみたい」って言ったんだよね。そしたらこれがホントにいいハマリなんだよねえ。のんちゃんのギターもそれいゆのドラムもさ、さっき言ったタイム感がいいんですよ。タイム感のよさは結局グルーヴにつながるからね。しかもちょうど締めにいい曲で、あれでまた1曲目の秋元(秋元康)の曲に戻るっていう、この流れがホントによくてさ!
──作詞は児玉雨子さんが多いですね。
近田 昔の人間もいいんだけど、どうせやるんだったら今のJポップの歌詞を書いてる人で、面白い人がいたらその方がいいと思っていて。彼女がハロプロ系の詞をけっこう書いてたのを「いいなあ」と思っていたので、これもダメもとでA×S×Eの曲を頼んでみたら速攻ですごくいいのを書いてくれた。そうこうするうちに曲が集まってきたので「じゃあ次も」と送ったらまたすぐにいい感じに書いてくれて。今回のアルバムは児玉さんの詞が6割くらいなんで、その世界観もあるんだろうけど、それだけではない、全体を貫いている統一感のようなものがあって、「何なんだろうな」と思ったら「あ、俺の声がいい声なんだ」と(笑)。今回初めて自分でプロデューサーもやらず、アイドルのように、ただ歌うことだけに集中できたのも大きかった。元々このアルバムは、ジューシィ・フルーツに提供した曲の仮歌を聞いた川口さんが「歌、いいですね」と言ってくれたのがきっかけで出すことになって、そのときは「親切なこと言ってくれて嬉しいな」くらいに思ってたんだけど、完成してみたら「あ、これは商売モノとしてイケるな」と思いました(笑)。
──最後に、デビューしてブレイクしたいと思っている人にメッセージをお願いします!
近田 年齢はあまり関係ないね。何か素晴らしいものを持ってる人は100歳だろうと200歳だろうといいだろうし、ダメな人は5歳でもダメですよ。それだけですよ。絶対的な天才の人は、何もしなくても平気。その人に何か光り輝くものがあれば誰かが気づくから、売り込まなくても大丈夫だと思います。そうじゃない人は、お稽古しかないよね。楽器も歌も音楽は、毎日毎日ずーっとお稽古し続けられるかどうかですよ。よくみんな「達成感」っていうけど、達成感じゃなくて「上達感」を延々楽しむこと。逆に言えば振り返った時に、「ああ、あの時サボらずにやってよかった。やってなかったらどういうことになってたんだろう」ってゾッとするってことだから。ただ俺はね、天才だからお稽古はしない(笑)。俺、ものすごく自分に自信があるんだよね。だって一度も売れたことないけど「世の中まだまだ俺に追いつかないわ」ってずっと安心してきたもん。最近ちょっとそこが不安なぐらい。だからこれからも時代に追いつかれないように、時代より先を延々行く自信があれば大丈夫だよ。それだけだよ、俺はね。こんなナマイキなヤツでスミマセン。